2020プログラミング元年

小学校で4月から「プログラミング教育」が必修になる。なぜ学ぶ必要があるのか。学校現場では何が課題なのか。全国でプログラミングの教員研修などを手がけてきたNPO法人「みんなのコード」の利根川裕太代表理事(35)に聞いた。【聞き手・千脇康平、写真・長谷川直亮】

●全員が学べる場必要

—必修化の意義とは。

◆前提として、コンピューターは21世紀の暮らしを支える非常に大事な科学的技術で、全ての子どもが触れる機会は絶対に必要です。プログラミング教育は、一部の塾などで行われていましたが、プログラミングに出会う機会はどうしても親の教育意識や経済力に左右されてしまいます。必修になれば、次世代を担う子どもたちに広くチャンスが届くことになります。

—先行実施している小学校もある。温度差はないのか。

◆自治体の予算や個々の先生の関心度の高さなさまざまな背景から、学校間で進捗にばらつきがあるのは否めません。先生たちが4月以降、できる限りいい事例を参考にするなどして、一定以上のレベルにいかに近づけていけるかが課題です。

—最近見た授業でよかった事例は。

◆栃木県の公立小が総合的な学習の時間で取り組んだ授業が印象的でした。身の回りの課題を見つけ、プログラミングで解決しようというプロジェクト型学習だったのですが、ある班では、低学年の児童が図書室の本を正しい場所に戻せるようにするため、高学年の子供たちが本の表紙をパソコンで画像認識させて「〇番の棚です」と音声で教えてくれるアプリを作ったんです。それも、ただスキルを学んだだけでなく、図書室の本の整頓状況について他の児童にアンケートしたり、貸し出される本の数を調べたりして問題意識を持ったことから始めたそうです。自分たちの生活をコンピューターで良くしていく体験ができる授業になっていました。

毎日新聞/2020/03/30/日付より